ナゴルノ・カラバフ
ナゴルノ・カラバフは古くからアルメニア人とアゼルバイジャン人の間で抗争が起きていた地域。
旧ソ連時代
アルメニアとアゼルバイジャンはソ連の一部として紛争は抑え込まれていた
公式にはナゴルノ・カラバフ自治州はアゼルバイジャンに属していた
この時期が最も平和だったのかも。
ソ連崩壊後
アゼルバイジャン・アルメニアの独立
かつてアルメニア人大虐殺をしたトルコに背後を立たれたアルメニア人はアゼルバイジャンと必死に戦いナゴルノ・カラバフを占領。
(背水の陣の典型例?または、危機感の差が勝敗をわけたのではないか)
以下は主要なプレイヤー
アルメニア
アルメニアの歴史は古くローマ帝国の時代から存在したとされる。独自のキリスト教会を有する。民族のシンボルはノアの方舟が最後に流れ着いたアララト山だが今はトルコ領。(アララト山は首都からもよく見える)
アルツァフ共和国(ナゴルノ・カラバフ)
アルツァフ共和国はナゴルノ・カラバフ自治州と更にその周辺地域を便乗併合して成立した国家。
ただしアルメニアを含めてアルツァフ共和国を国家承認している国はいないので、正当性が非常に弱い。
特にナゴルノ・カラバフ地域を奪還されると残りの地域の支配の正当性が失われてしまう。
アゼルバイジャン
トルコ(テュルク)系の国家。トルコと違ってシーア派だがイランと対象的に世俗派
ナゴルノカラバフ地域の奪還に意欲を燃やす。だいぶ(怒りが)溜まってんじゃんアゼルバイジャン。
トルコ
同じ民族のアゼルバイジャンを強く支持しており、アルメニアと激しく敵対している。かつてアルメニア人を大虐殺した。
参考
20世紀のトルコの負の歴史が日本であまりに知られて無さすぎる
民族主義、イスラムの大義、そしてオスマン帝国の復興を掲げるエルドアン政権トルコは‟大人の対応”で許してくれない。アルメニアに妥協などしたくないだろう。
トルコの後ろ盾はアゼルバイジャン人に勇気を与え、トルコが今回の衝突が深まる一番の原因と言っていい。
イラン
イスラム教シーア派のイスラム法学者が統治する宗教国家で地域の大国。アルメニアとは何もかもが違うがアルメニア唯一のパートナーといっていい関係。
地図で見ればわかるが外国がアルメニア(ナゴルノ・カラバフ)を支援するにはイランを経由するしかない。
ということは・・・?
アゼルバイジャンはロシアがイラン経由でアルメニアを支援していると主張しているようだがイランは公式には否定している。(否定するしかない)が、現在のところ少なくとも積極的に国境での物流を取り締まってはいないのは事実だろう
イランの北部のアーザルバーイジャーン地域にはたくさんのアゼルバイジャン人が住んでいるが彼らと中央のペルシャ人は関係がよくない。とはいえ彼らを無視して大っぴらな支援はできずイランの立場は難しい。
イスラエル
イスラエルにとってアゼルバイジャンはかなり貴重なイスラム圏での友好国である。
アゼルバイジャンとイスラエルは互いに信頼のおけるパートナーで、アルメニア・イランの関係と対照的だ。
ここでアゼルバイジャンを支援することでイスラム教徒に恩を売れる。遠く離れたアルメニアの犠牲と引き換えに。イスラエルにとっては国益上非常にありがたいことで、事実イスラエルは武器援助を行っているという情報もある。
ジョージア
コーカサス三国の残りの一国でどちらとも関係が良いわけではない、そしてロシアとの関係は険悪で10年前は戦争に発展した。
パキスタン
パキスタンは相当な親トルコ・親アゼルバイジャンでアルメニアの国家承認を拒否するほど。
Twitterでアゼルバイジャンを支持する意見は大体トルコかパキスタンと思われるユーザーが多かった。
とはいえコロナで弱っているであろうパキスタンが直接利害関係のないナゴルノカラバフに関与できるにしても相当限定的だと思われます。
ロシア
表向きアルメニアのサポーター(アルメニアにはロシア軍基地がある・集団安全保障条約を結んでいる)だがアゼルバイジャンとの関係が悪い訳でもないのでアルメニアのために戦う義理はないとも言える。
ロシアが認めていないナゴルノ・カラバフ(アルツァフ共和国)での戦闘ならなおさら。トルコとの関係も良好だし。
アメリカ
この地域にあまり関心がない(?)(ただしキリスト教右派におもねるトランプ政権がどう動くだろうか)
EU
とにかく穏便に済ませたい。EUにとってアルメニアもアゼルバイジャンも(広義の)ヨーロッパの一部で、地域の不安定化は望ましくない。
感想
軍事的には知らないが外交的にはアゼルバイジャン有利な気がする。
(Twitterではアゼルバイジャンは飛び地のナヒチェヴァンまでを占領してイランアルメニア国境を封鎖するとかいう意見が雨後の筍のごとく見受けられたが
アルメニア本国まで攻撃はしないだろう)
どういう形であれ人間同士で命のやり取りをするような愚行が早く収まるといいと思っています。
(2020 10.1)